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「ミステリは好きだけど、ただの“事件解決してスッキリ!”だけだと物足りない」
「読後にちょっとほろ苦さが残るタイプの作品が聴きたい」
そんな人に全力で推したいのが、逸木裕さんの 『五つの季節に探偵は』 です。
- 第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞作「スケーターズ・ワルツ」を収録した連作短編集
- 2022年1月に単行本として刊行、2024年8月に角川文庫として文庫化
- 2025年には Audible版(朗読:水谷麻鈴さん) としても配信
この記事では、ネタバレなしで『五つの季節に探偵は』の魅力と、探偵みどりシリーズの読み方、Audible版の聴き心地までまとめます。
『五つの季節に探偵は』ってどんな本?ざっくり概要
まずは基本情報から。
- タイトル:五つの季節に探偵は
- 著者:逸木 裕(いつき ゆう)
- レーベル:角川文庫
- ページ数:約320ページ
- 発売日
- 単行本:2022年1月28日
- 文庫:2024年8月23日
- 受賞歴:収録作「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞
主人公は私立探偵の 榊原みどり。
“人の本性を暴かずにはいられない”という、かなり厄介な性質を持った女性探偵です。
本作は、
高校生のみどり → 大学生 → 社会人 → プロの探偵…と、
年代ごとに少しずつ成長していく彼女を、
**五つの事件(=五つの季節)**を通して描く連作短編集。
になっています。
探偵みどりシリーズの読む順番
榊原みどりは、いわゆる「探偵みどりシリーズ」の主人公です。KADOKAWA公式の作品一覧を整理すると、流れはこんな感じ。
- 虹を待つ彼女(長編)
- 五つの季節に探偵は(本記事の短編集)
- 彼女が探偵でなければ(連作短編集/2024年刊)
ただし、『五つの季節に探偵は』は
- 高校〜社会人までの「みどりの原点」を描く構成
- 各話ごとに独立した短編として読める
ので、この本から入ってもまったく問題なしです。
そのうえで、
- 『五つの季節に探偵は』で“みどりの成り立ち”を知る
- 『彼女が探偵でなければ』で、二児の母になった彼女の現在を見る
という順番で読むと、「探偵みどり」というキャラクターがかなり立体的に見えてきます。
ネタバレなしでわかる『五つの季節に探偵は』の魅力
1. “殺人が起きないのに怖い” 逆張りミステリ
公式の紹介文でも強調されていますが、本作に収録された5編はいずれも 「殺人事件」が起きません。
その代わりに焦点が当たるのは、
- 人の本性
- ささやかな嘘
- 見たくなかった裏側
といった、“心理の部分”。
五感(触覚・嗅覚・聴覚・味覚・視覚)がそれぞれ事件の鍵として関わってくる趣向もあり、
静かに怖いタイプのミステリになっています。
2. 「謎解き」だけじゃなく「暴いたあと」を描く
みどりは“本性を暴かずにはいられない”タイプの探偵です。
だからこそ、
- 真相に気づいてしまう
- それを言葉にしてしまう
- その結果、誰かの人生が変わってしまう
という**“暴いたあとの重さ”**が、どの話にも付きまといます。
謎が解けてスッキリ!
だけで終わらず、
「でも、これを明かすのが本当に正解だったのか?」
というモヤモヤが、いい意味で後味として残る作品です。
各短編のテーマと見どころ(ネタバレなし)
それぞれの短編を、テーマと雰囲気だけ軽く紹介します。
(構成はKADOKAWA公式の目次に準拠)
「イミテーション・ガールズ」―― 2002年 春
高校2年のみどりが、同級生から 「先生の弱みを握ってほしい」 と依頼されるところから始まる一編。
- 爽やかに見える教師の“もう一つの顔”
- それを暴くことに快感を覚えてしまうみどり
ここで彼女の「厄介な性質」が目覚める、シリーズの原点エピソードです。
「龍の残り香」―― 2007年 夏
大学生になったみどりが出会うのは、希少な香料をめぐる小さな謎と人間関係のきしみ。
- 香り(嗅覚)が重要なモチーフ
- ノスタルジックさと不穏さが同居する雰囲気
「匂い」が、過去の出来事と人の感情を呼び起こすような、しっとり系の短編です。
「解錠の音が」―― 2009年 秋
ストーカー被害を訴える男性からの依頼を受けたみどりが、
調査を進めるうちに “世界が反転する瞬間” に出会う話。
- タイトル通り「鍵を開ける音(聴覚)」が重要な手がかり
- 読んで(聴いて)いる側の認識もひっくり返される構成
カドブンの試し読みでは、「世界は反転する」「切れ味鋭いミステリ」と評されていて、
個人的にも「一番ぞっとした」エピソードです。
「スケーターズ・ワルツ」―― 2012年 冬
旅先で出会った女性から聞かされる、指揮者とピアニストの逸話。
そこに贖罪の気配を感じ取ったみどりは、彼女の話に隠された秘密に気づいてしまいます。
- 音楽の世界×過去の罪
- 自分の思い込みがひっくり返されるオチ
この作品が、第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞した一編。
「読後にしばらく黙り込んでしまうタイプ」の短編です。
「ゴーストの雫」―― 2018年 春
時代は一気に現代へ。
SNS時代の“ゴースト”を追うような一編で、視覚(画面)やネット空間がテーマに絡んできます。
- ネットに残る「過去の影」
- そこに縛られ続ける人たち
シリーズの中でも特に“今っぽい不穏さ”を感じるラストです。
Audible版『五つの季節に探偵は』を聴くという選択肢
Audible版の基本情報
- タイトル:五つの季節に探偵は
- 著者:逸木 裕
- ナレーター:水谷 麻鈴
- 再生時間:約10時間5分
- 配信形態:Audibleオーディオブック(完全版)
「みどりシリーズ第一短編集」として、著者ご本人もXでAudible版の配信を告知しています。
聴き心地のポイント
- 10時間ちょっとなので、1話あたり2時間前後の感覚
- 通勤片道30分なら「1〜2日で1話」というペース
- 連作だけど1話ごとに区切りがはっきりしているので、ながら聴きと相性がいい
水谷麻鈴さんは、続編『彼女が探偵でなければ』の朗読も担当しているので、
両作をAudibleで続けて聴くと、“みどりの声”が自分の中でかなり固まってくるのもポイントです。
『五つの季節に探偵は』が刺さる人・刺さらない人
刺さる人
- 人間ドラマ強めのミステリが好き
- 「誰かの本性を暴くこと」に、快感と怖さの両方を感じてしまう
- 探偵=正義、と言い切れない物語に惹かれる
- 殺人事件より、**“心の傷”や“取り返しのつかなさ”**にゾクっとくる
もしかすると合わないかもしれない人
- ひたすらスカッとする勧善懲悪ミステリを期待している
- 探偵の行動は常に「正しい選択」であってほしい
- 読後にモヤッと悩むタイプの作品が苦手
『五つの季節に探偵は』は、
「すべて丸く収まってよかったね!」で終わらないミステリなので、
読者にも少し“覚悟”がいるタイプの1冊です。
続編『彼女が探偵でなければ』とセットで読むと見えてくるもの
- 『五つの季節に探偵は』
→ 高校〜社会人までの「探偵みどりの原点・形成期」 - 『彼女が探偵でなければ』
→ 二児の母となったみどりが、“探偵である自分”と真正面から向き合わされる連作
この2冊を続けて読む(聴く)と、
「本性を暴かずにはいられない」性質を持つ人間が、
歳を重ね、家庭を持ちながら、
それでも探偵であり続けることの意味
が、かなりえぐるように見えてきます。
「みどり、また一段と良い探偵になったじゃないか」という推薦コメントもあって、
シリーズ通して読むことを前提に作られている感も強いです。
まとめ|みどりシリーズの入り口としても、“Audible沼”の入り口としても優秀
最後にポイントを整理すると……
- 『五つの季節に探偵は』は、
- 探偵みどりシリーズの第一短編集
- 第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞作「スケーターズ・ワルツ」収録の連作短編集
- 殺人は起きないのに、
- 五感をモチーフにした仕掛け
- 人の本性を暴くことの快楽と残酷さ
でじわじわ効いてくる“ビターなミステリ”
- Audible版は水谷麻鈴さん朗読・約10時間。
通勤や家事の「ながら時間」で、1話ずつじっくり味わえるボリューム感
個人的なおすすめルートは、
- まずは『五つの季節に探偵は』を
- 紙 or 電子で読む
- もしくはAudibleで1話ずつ聴いてみる
- ハマったら『彼女が探偵でなければ』へ進む
- さらに遡って長編『虹を待つ彼女』に手を伸ばす
という 「みどり沼コース」 です。

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