「夢がゼロになった人間に、もう一度“翼”が生えるのか?」
そんなテーマを真正面からぶつけてくるのが、
中山七里さんの長編ミステリ 『翼がなくても』 です。
しかも今作、
2025年10月にAudible版(朗読)も配信スタートしていて、
「どんでん返し×感涙ラスト×スポーツ×御子柴弁護士」という
耳で聴くにはずるいくらいおいしい一冊になっています。
この記事でわかること
- 『翼がなくても』がどんな物語か(ネタバレなしのあらすじ)
- 紙・電子とAudible版の基本情報と違い
- Audibleで聴くときの“聴き心地”と相性のいいシーン
- どんな人に刺さって、どんな人には合わないか
結論:脚を失っても“飛び方”を探す物語。どんでん返しの先で、ちゃんと泣かされる
- オリンピック候補だった女子スプリンターが事故で左足を失い、
絶望の底から“別の翼”を手に入れていく再生物語 - 中山七里作品らしく、御子柴弁護士×犬養刑事が登場し、法廷・捜査パートもガッツリ
- ラストにはタイトル回収のどんでん返しと、
「そう来るか…」と静かに泣かされる系の感動がちゃんと待っている - Audible版は約9時間半。感情の波が大きいタイプなので、
通勤+夜の一気聴きコースがかなり危険(いい意味で)
基本情報(紙・電子&Audible)
書籍版
- タイトル:翼がなくても
- 著者:中山 七里
- レーベル:双葉社(単行本/文庫)
- 単行本:2017年1月刊
- 双葉文庫:2019年12月刊
公式あらすじの要点
- 陸上200mでオリンピックを狙う市ノ瀬沙良
- 交通事故で左足を切断する大怪我を負う
- 加害者は、よりによって幼なじみの相楽泰輔
- アスリート生命を絶たれた沙良は、泰輔への憎しみを募らせる
- そんな泰輔が何者かに殺害され、5000万円の保険金が支払われる
- 犯人は誰なのか? そして、沙良は絶望からどう再起するのか?
出版社コメントにもある通り、
「どんでん返しの先に感涙のラストが待つ傑作長編ミステリー」
というのが、この作品についた“公式ラベル”です。
Audible版
- タイトル:翼がなくても
- 著者:中山 七里
- ナレーター:木ノ 瀬ちひろ
- 再生時間:約9時間36分
- 配信日:2025年10月31日
- 提供:Audible Studios(ONLY FROM Audible系の独自朗読作品)
- ジャンル:ミステリー(プレミアムプラン聴き放題対象)
あらすじ(ネタバレなし)
主人公は、陸上200mの日本トップクラス選手・市ノ瀬沙良。
オリンピック候補というまさに「飛び立つ直前」だった彼女は、
幼なじみ・相楽泰輔の起こした交通事故に巻き込まれ、左足を失います。
- 夢は失われる
- 体は元に戻らない
- 加害者は幼なじみで、しかも裁きは甘くなりそう
沙良は理不尽さと憎しみでいっぱいになり、
人生そのものが真っ暗になっていく。
ところがある日、
その泰輔が自宅で刺殺された状態で発見されます。
- 犯人には5000万円の保険金という巨大な動機
- 被害者と深い因縁を持つ沙良とその家族
- しかし、沙良には“物理的に不可能”な事情もあり――
捜査にあたるのは、シリーズ読者にはおなじみの犬養刑事。
そして事件の陰には、これまたおなじみ、悪名高い御子柴礼司弁護士の姿がちらつきます。
「保険金殺人か?」「復讐か?」という王道の入り口からスタートしつつ、
物語は次第に、
- パラスポーツへの挑戦
- 生きる意味をどう塗り替えるか
という、より大きなテーマへと舵を切っていきます。
Audible版で聴く『翼がなくても』の聴き心地
木ノ瀬ちひろさんの朗読と相性がいい理由
Audible版のナレーターは、声優・ナレーターとして活動する木ノ 瀬ちひろさん。
レビューやサンプルを踏まえると、だいたいこんな印象の声質です:
- 落ち着いていて、シリアス寄りのドラマと相性がいい
- 感情を込めるところと抑えるところのメリハリがはっきりしている
- 早口シーンでも聞き取りやすく、情報量の多い会話が多いミステリでもストレスが少ない
本作は、
- 犬養刑事サイドの捜査パート
- 御子柴弁護士サイドの法廷・交渉パート
- 沙良の内面独白パート
がガンガン切り替わるので、
文字だと「誰のパートか」意識して読まないといけないタイプの構成です。
Audibleだと、
- 声のトーンやテンポの変化
- ちょっとした間の取り方
で、自然と脳がシーン切り替えについていけるので、
**「ミステリだけど疲れずに追える」**という意味でオーディオブック向きの作品だと思います。
ボリューム感とおすすめの聴き方
- 再生時間:約9時間36分
- 通勤片道30分なら、1週間弱で聴き終わるボリューム
ただし、中盤以降は
「続きが気になりすぎて止まらない」
系の声も多く、
実際に「一気聴きしてしまった」というAudible感想も出ています。
おすすめの聴き方
- 平日の通勤・家事タイムで前半〜中盤まで進める
- 週末か、夜の時間に後半を一気聴きする
この“前菜+メイン”構成が、一番気持ちよくハマると思います。
テーマと読みどころ
1. 「足を失う」=「翼をもがれる」わけじゃない
沙良は、陸上選手としての自分を完全に失い、
一度は**「生きている意味すら見えなくなる」**ところまで落ちます。
物語のなかで描かれるのは、
- 身体を失うという現実
- それでもなお、競技に戻ろうとするあきらめの悪さ
- その過程で見えてくる、“別種の翼”の存在
という、スポ根ものと社会派ミステリのあいのこみたいなライン。
レビューでも、
「翼…なくても…ってなってるけど、今もあるんとちゃうかな。
また、違った翼を手に入れたというか…」
とタイトルに絡めた感想が多く語られていて、
まさにタイトル回収系の一冊といえます。
2. 御子柴弁護士 vs 犬養刑事 ― 中山作品“オールスター感”
本作の大きな魅力のひとつが、
中山七里ワールドの人気キャラたちが一堂に会するオールスター感。
- 冷徹で毒舌な弁護士・御子柴礼司
- 妥協しない刑事・犬養隼人
- さらに御厨検視官など、おなじみの面々も登場
「単発の長編かな?」と思って読み(聴き)始めて、
途中で彼らが出てきた瞬間に
「うお、ここでその名前が来るのか!」
とテンションが上がる人も多いはず。
- 御子柴サイド:法の枠をギリギリで攻める論理
- 犬養サイド:被害者と加害者両方の“人間”を見る視点
この価値観のぶつかり合いが、
ただの保険金殺人ものに終わらせない厚みを作っています。
3. どんでん返しの“気持ちよさ”と“痛さ”
公式が「どんでん返し&感涙ラスト」と言ってしまっているくらい、
ラストに向けてのひっくり返しはがっつりあります。
ただ、その“種明かし”は
- 単純に犯人だけを当てるタイプのパズル
というより、 - **「お金」「罪」「贖い」「未来」**がどう繋がっていたのか
が、最後にスッと腑に落ちるタイプ。
その瞬間、
「それでも、この選択しかなかったんだろうな……」
と、すこし胸が痛くなる感じの感動が来ます。
どんな人におすすめ?(刺さる人/刺さらない人)
刺さる人
- どんでん返し系ミステリが好き
- スポーツもの(特に陸上・パラスポーツ)の再生ドラマに弱い
- 御子柴弁護士シリーズや犬養刑事シリーズが好きで、
クロスオーバー作品を追いたい人 - 「障害を持つ主人公=ひたすら気の毒」ではなく、
ガチで“しぶとい”主人公が見たい人
もしかすると合わないかもしれない人
- スポーツ要素・パラスポーツ描写に興味がない
- 御子柴の“容赦ない言動”がどうしても苦手
- 「現実にこんなことされたら許せない」と思う展開を
物語としても受け入れづらいタイプ
命や人生の重さをガンガン扱う作品なので、
軽い日常ミステリ気分で読むと、やや胃もたれするかもです。
Audibleで聴くときのおすすめシーン
- 通勤・通学
- 序盤〜中盤の“事件の輪郭が見えてくる”あたりまでは、
通勤の細切れ時間とも相性良し
- 序盤〜中盤の“事件の輪郭が見えてくる”あたりまでは、
- ウォーキング・ランニング中
- 沙良の心情やトレーニング描写が多いので、
自分も体を動かしているとかなり感情移入しやすい
- 沙良の心情やトレーニング描写が多いので、
- 夜の一気聴き
- 終盤は「続きが気になる病」になる可能性が高いので、
まとまった時間が取れる夜・休日に回すのがおすすめ
- 終盤は「続きが気になる病」になる可能性が高いので、
まとめ|“翼”がない人にこそ刺さる、Audible向きミステリ
『翼がなくても』は、
- 夢を奪われた女子スプリンターが
- 憎しみと絶望を抱えながらも
- それでも別の形で“飛ぶこと”を選ぶまでの物語
を、
どんでん返しミステリ+法廷・捜査ドラマ+パラスポーツという欲張りセットで描いた一冊です。
Audible版は約9時間半。
木ノ瀬ちひろさんの朗読と相まって、
- 犬養刑事サイドの“熱”
- 御子柴弁護士サイドの“冷たさ”
- 沙良の“あきらめきれない熱量”
が耳からじわじわ伝わってくるタイプの作品になっています。
「最近ちょっと気力が落ちてるな……」というときに、
“翼がなくても、まだ飛び方はある”
というメッセージを、
ミステリ経由でガツンと浴びたい人に、かなりおすすめです。


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